2023年医薬品審査報告書(2024年2月4日CDE発行)の分析
– 2023年、コロナ禍収束後の中国のIND/NDAの勢いは?
医薬研発達人編集長 高野哲臣(t2T Healthcare株式会社代表取締役社長)
今回の医薬研発達人第68号では、2024年2月4日にCDEから発行された「2023年度药品审评报告」「2023年医薬品審査報告書」(https://www.cde.org.cn/main/news/viewInfoCommon/9506710a7471174ab169e98b0bbb9e23) を取り上げる。
CDEが毎年発行する年次の医薬品審査報告書(前年1-12月分)は、2012年分から2017年分までの6年間は翌年の2月から3月にもれなく発行されていた。
しかし、薬事規制改革の進展等による業務量増大などにより、2018年分から2021年分までの4年間は翌年の6月から7月と発行時期が遅くなり、さらにコロナ禍の影響を最も受けた年と言える2022年分の医薬品審査報告書は、医薬研発達人第57号(2023年9月25日発行)「CDE Annual Reports 2022を紐解く」に記載したとおり、2023年9月6日の発行であった。
それからわずか5カ月後の2024年2月4日、CDEから「2023年度药品审评报告」「2023年医薬品審査報告書」が発行された。
今回、2023年分の発行時期から推測すると、CDEにおいては、薬事規制改革開始以降の急速な業務量増大やコロナ禍の混乱からだいぶ落ち着いてきていることが伺える。
なお、「中国新药注册临床试验进展年度报告(2022年)」「中国新薬承認申請用臨床試験年度報告書(2022年)」は、「2022年医薬品審査報告書」発行翌日の2023年9月7日発行であったが、「中国新药注册临床试验进展年度报告(2023年)」「中国新薬承認申請用臨床試験年度報告書(2023年)」の発行は、2024年3月以降と見込まれるため、今号の医薬研発達人では、「2023年医薬品審査報告書」のみを取り上げることとした。
ちなみに、前述のとおり、医薬研発達人第57号(2023年9月25日発行)では2022年分の2つのCDE Annual Reportsについて言及したが、医薬研発達人第24号(2022年6月5日発行)「CDE相談の現況」では2021年分のこれらCDE Annual Reportsについて言及しているので、今回の第68号と合わせると、2021-2023年分の3年間の比較が可能となっている。
1. 2023年の中国のIND/NDA申請受理件数は、いずれも、コロナ禍前より大幅増加
中国のIND申請受理件数の経年変化を見ると、2019年: 1,021試験(前年比+29.9%) → 2020年: 1,548試験(前年比+51.6%) → 2021年: 2,412試験(前年比+55.8%)と順調に増加していたが、 2022年には 2,244試験(前年比-6.97%)となり、コロナ禍の影響が見られた。しかし、2023年には2,997試験と前年から33.6%増加するV字回復が見られ、過去最高数を更新した。(2023年医薬品審査報告書の図3参照)
また、中国のNDA申請受理件数の経年変化を見ると、2019年: 257件(前年比+28.5%) → 2020年: 323件(前年比+25.7%) → 2021年: 389件(前年比+20.4%)と、年々伸びていたものの、やはり2022年は334件となり前年より14.1%減少した。しかし、2023年には470件と前年から40.7%増加するV字回復が見られ、IND申請受理件数と同様に過去最高数を更新した。(2023年医薬品審査報告書の図3参照)
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
2. 創新薬が中国のIND/NDA申請受理件数の大幅増加をけん引
中国の2023年: 2,997件のIND申請受理件数のうち、2,298件(76.7%)は創新薬(世界のどこの国・地域においてもまだ発売されていない新有効成分)で占められていた。その内訳は、創新中薬が47薬剤54試験、創新化学薬品が600薬剤1,368試験、創新予防生物製品が34ワクチン43試験、創新治療生物製品が576製品833試験で、計1,257薬剤2,298試験であった。(直下の表参照)
2023年のIND申請受理件数の内訳
2023年 | 中薬 | 化学薬品 | 予防生物製品 | 治療生物製品 | 合計 | |||||
試験数 | 薬剤数 | 試験数 | 薬剤数 | 試験数 | 製品数 | 試験数 | 製品数 | 試験数 | 薬剤数 | |
IND申請受理件数 | 75 | 68 | 1,778 | 829 | 74 | 56 | 1,070 | 697 | 2,997 | 1,650 |
うち創新薬 (構成比) | 54 (72.0%) | 47 (69.1%) | 1,368 (76.9%) | 600 (72.4%) | 43 (58.1%) | 34 (60.7%) | 833 (77.9%) | 576 (82.6%) | 2,298 (76.7%) | 1,257 (76.2%) |
(2023年医薬品審査報告書から筆者にて抽出ならびに加筆)
なお、創新化学薬品と創新治療生物製品のIND申請受理件数の経年変化を見ると、2022年の創新化学薬品のIND申請受理件数(1,046試験)で、コロナ禍による一時的な落ち込みが見られるものの、それを除くと、いずれも一貫した右肩上がりの増加が認められた。(2023年医薬品審査報告書の図8と図13参照)
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
中国の2023年: 470件のNDA申請受理件数のうち、133件(28.3%)は創新薬(世界のどこの国・地域においてもまだ発売されていない新有効成分)で占められていた。その内訳は、創新中薬が7薬剤8件、創新化学薬品が55薬剤79件、創新予防生物製品が1ワクチン1件、創新治療生物製品が29製品45件で、計92薬剤133件であった。(直下の表参照)
2023年のNDA申請受理件数の内訳
2023年 | 中薬 | 化学薬品 | 予防生物製品 | 治療生物製品 | 合計 | |||||
件数 | 薬剤数 | 件数 | 薬剤数 | 件数 | 製品数 | 件数 | 製品数 | 件数 | 薬剤数 | |
NDA申請受理件数 | 26 | 21 | 249 | 163 | 17 | 9 | 178 | 105 | 470 | 298 |
うち創新薬 (構成比) | 8 (30.8%) | 7 (33.3%) | 79 (31.7%) | 55 (33.7%) | 1 (5.9%) | 1 (11.1%) | 45 (25.3%) | 29 (27.6%) | 133 (28.3%) | 92 (30.9%) |
(2023年医薬品審査報告書から筆者にて抽出ならびに加筆)
なお、創新化学薬品と創新治療生物製品のNDA申請受理件数の経年変化を見ると、2022年の創新化学薬品のNDA申請受理件数(29件)で、コロナ禍による一時的な落ち込みが見られるものの、それを除くと、いずれも一貫した右肩上がりの増加が認められた。(2023年医薬品審査報告書の図9と図14参照)
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
3. CDE相談件数はさらに増加中 (2023年の取扱件数は5,549件で前年比27.6%増)
「2021年医薬品審査報告書」によれば、中国のCDE相談件数(弁理。申込が受理された後、交流条件に合致すると判断された取扱件数)は、2018年: 1,326件 → 2019年: 1,871件(前年比+41.1%) → 2020年: 2,451件(前年比+31.0%) → 2021年: 3,946件(前年比+61.0%) となっていて、IND申請数の急激な増加に呼応して、CDE相談件数も飛躍的に伸びていた。(直下の表ならびに2023年医薬品審査報告書の図46参照)
そして、「2022年医薬品審査報告書」、「2023年医薬品審査報告書」によれば、その後のCDE相談件数は、申込受理件数が2022年: 4,924件(前年比+10.7%) → 2023年: 5,912件(前年比+20.1%)、取扱件数が2022年: 4,349件(前年比+10.2%) → 2023年: 5,549件(前年比+27.6%) と、2022年のコロナ禍の停滞から2023年は挽回し、再び右肩上がりの大きな増加に転ずるなど、過去最高数を継続更新中である。(直下の表ならびに2023年医薬品審査報告書の図46参照)
2017年-2023年のCDE相談件数(申込受理件数と取扱件数)の推移
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
申込受理件数 | 840 | 1,982 | 2633 | 3,229 | 4,450 | 4,924 | 5,912 |
(前年比) | – | +136.0% | +32.8% | +22.6% | +37.8% | +10.7% | +20.1% |
取扱件数 | 635 | 1,326 | 1,871 | 2,451 | 3,946 | 4,349 | 5,549 |
(前年比) | – | +108.8% | +41.1% | +31.0% | +61.0% | +10.2% | +27.6% |
(2021年、2022年、2023年医薬品審査報告書から筆者にて抽出ならびに加筆)
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
2023年の中国のCDE相談件数(取扱件数): 5,549件(前年比+27.6%)の内訳は、Pre-INDが1,496件(構成比26.96%)、Pre-NDAが560件(同10.09%)、I類会議が1,086件(同19.57%)、III類会議が1,151件(同20.74%)等となっていた。2022年と比べると、Pre-IND(1,299→1,496件、前年比+15.2%)、Pre-NDA(456→560件、前年比+22.8%)、I類会議(765→1,086件、前年比+42.0%)、III類会議(902→1,151件、前年比+27.6%)と、これら4つのカテゴリーでは、いずれの数も増えていたが、特にI類会議の増加が顕著で、構成比においても約2ポイント上昇していた。(2022年医薬品審査報告書の表24と2023年医薬品審査報告書の表12参照)
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
2020年12月11日にCDEから通知され、同日施行された「医薬品の臨床開発と技術審査に関するコミュニケーション管理弁法(2020年第48号)」(https://www.cde.org.cn/main/news/viewInfoCommon/b823ed10d547b1427a6906c6739fdf89) の第7条によれば、中国では、First in Chinese試験(但し米欧日でIND承認済の国際共同試験等は除く)の際の最初のIND申請時の「Pre-IND相談」、ならびに生物製剤のNDA申請時(中国にはBLA申請制度は無い)の「Pre-NDA相談」は、原則として必須となっている。また、外国臨床データのみで、中国人臨床データ免除にて中国NDA申請に臨もうとする際は、「Pre-NDA相談」の枠組みとなる。もちろん、言うまでもなく、創新薬にとって、「Pre-IND相談」と「Pre-NDA相談」は、極めて重要である。
しかしながら、CDE相談件数(弁理。すなわち取扱件数)の経時推移で見ると、「Pre-IND相談」が2019年: 34.9% (653/1,871) → 2020年: 37.5% (919/2,451) → 2021年: 32.8% (1,296/3,946) → 2022年: 29.9% (1,299/4,349) → 2023年: 27.0% (1,496/5,549)、「Pre-NDA相談」が2019年: 10.3% (193/1,871) → 2020年: 13.2% (324/2,451) → 2021年: 11.0% (436/3,946) → 2022年: 10.5% (456/4,349) → 2023年: 10.1% (560/5,549) と、いずれも件数は一貫して増加しているものの、構成比においては2020年→2021年→2022年→2023年と連続して微減していた。
4. 2023年の対面助言(web会議・電話会議を含む)の開催数は?
CDE相談のうち、対面助言(web会議・電話会議を含む)の割合は、2019年から2022年まで、継続して減少していた。
「2021年医薬品審査報告書」と「2022年医薬品審査報告書」によれば、CDE相談に占める対面助言(web会議・電話会議を含む)の割合は、2018年: 24.3% (322/1,326) → 2019年: 22.5% (421/1,871) → 2020年: 10.9% (268/2,451) → 2021年: 10.8% (425/3,946) → 2022年: 9.7% (424/4,349)と、対面助言の回数は(コロナ禍初年でCDEと相談者側の双方で対応が追い付かなかった2020年を除き)毎年増加してきているものの、回数がキャパシティに近づくにつれ、対面助言の割合は低下し、一層狭き門となっていた。すなわち、相談者側の需要はまだまだ満たされていない状況と考えられた。(2021年医薬品審査報告書の表19と2022年医薬品審査報告書の表25参照)
そして、残念ながら、「2023年医薬品審査報告書」では、対面助言(web会議・電話会議を含む)の開催数に関する記載が割愛されているため、2023年の分析を行うことはできない。「CDE相談の取扱件数が2022年: 4,349件(前年比+10.2%) → 2023年: 5,549件(前年比+27.6%) と大きく増加したことによって、2023年の対面助言の割合は2022年よりさらに低下した」という事態が起こっていないことを祈りたい。
5. 附件のコンテンツが充実
「2023年医薬品審査報告書」では、過去最高数を更新して、次の10件の附件/表が載った。
- 附件1 2023年国家药监局批准的创新药
- 附表2 2023年通过优先审评审批程序批准的罕见病用药
- 附表3 2023年通过优先审评审批程序批准的儿童用药
- 附件4 2023年国家药监局批准的境外生产原研药
- 附件5 2023年国家药监局批准的药品纳入加快上市程序情况
- 附件6 2023年纳入突破性治疗药物程序的药物
- 附件7 2023年国家药监局附条件批准的药品
- 附件8 2023年药审中心发布的指导原则
- 附件9 ICH正在活跃的议题
- 附件10 2023年药审中心开展的培训
2023年9月6日発行の「2022年医薬品審査報告書」まで入っていた「海外上市済かつ中国で臨床上緊急ニーズのある新薬リストに掲載された薬剤(2018/11/1発表40薬剤, 2019/5/29発表26薬剤, 2020/11/19発表7薬剤の計3回73薬剤)」の中国承認状況等の動向は、もうほとんど更新が無いためか、今回の「2023年医薬品審査報告書」からは消えてしまった。
一方、「優先審査プロセスを通じて承認された希少疾患用医薬品(附表2)」、「優先審査プロセスを通じて承認された小児用医薬品(附表3)」、「条件付き承認された医薬品(附件7)」など、今回の「2023年医薬品審査報告書」から、いくつかの役立つ附件も加わっている。
6. まとめ
上記の分析のサマリを以下に示す。
- 2023年の中国のIND/NDA申請受理件数は、いずれも、コロナ禍前より大幅に増加した。
- そのIND/NDA申請受理件数の大幅増加をけん引したのは、創新薬であった。
- 2023年のCDE相談件数は、右肩上がりでさらに増加し、過去最高値を更新した。 (2023年の取扱件数は5,549件で前年比27.6%増)
- CDE相談のうち、対面助言(web会議・電話会議を含む)機会に関する記載は無くなった。
- 附件の数は10件/表となり、過去最高数を更新し、コンテンツも充実した。
「中国新薬承認申請用臨床試験年度報告書(2023年)」は、2024年2月26日現在、まだ発行されていないため、今号の医薬研発達人では、2024年2月4日発行の「2023年医薬品審査報告書」のみを取り上げた。
本文中の図表は、以下のリンク先をご参照ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/PbBurw7D64g-eQkZShbFgg
